Dark night of the soul Secret path to the Light

神の仮面 自由の偶像 人の血
2015-11-25 Wed 01:59

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いったい、なにをやっているのだろう。

あの事件から、まだそれほど経っていないはずなのに・・・
だが、このことで何かを語ろうとすれば、みな偽善になりそうで怖い。

悲しみさえ表にせず、心のなかに留めておくべきなのか。
皮肉や嫌味の胡椒でも加えなければ、死者を悼むこともできないのか。
だがそんなことなどお構いなしに、事態はますます悪化の一途をたどる。
世界が、ほんの一握りの力で動かされているのが、よくわかる。

ひび割れた杯からしたたるお零れを、われ先に啜るのは恥ずべきことだ。
わたしもまた壊れた器、脆いもの。なにがなんだか、もうわけがわからぬ。

それにしても、いくつかの写真を見たが、
パリの男女の、なんと美しいことだろうか。
悲しみのうちにも気高い人々の姿に、
だれが、なんの、苛立ちとを憎しみを募らせるのか。

神と預言者を侮辱する殺戮の徒。
そして「美しい国」のお気楽な民。
自爆といい、性奴隷といい、宗教偽装といい、なんと似通っていることか。
「IS」と「大日本」には、驚くほど相通じる価値観や気質がある。
この世界にあって、同じものを憎み、破壊し、否定しようとするからだ。

安保法制に怒る人間までもが、寄って集って被害国を袋叩きにし、
「自業自得だ」と説教をはじめる奇妙な習性は、いったい何なのか。
度し難い欧米コンプレックス、強烈なルサンチマンは、どこから来るのか。
「欧米の帝国主義が悪い」だけでは、「安倍談話」の歴史観と何も変わらぬ。

パリでの流血を知り、まるで念仏のように、脳裏で繰り返した言葉がある。
自民党の改憲草案では、まるごとすっかり削除されている、
日本国憲法の第97条「基本的人権の本質」についてである。

 『この憲法が日本国民に保障する基本的人権は
  人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、
  これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、
  現在及び将来の国民に対し、
  侵すことのできない永久の権利として、信託されたものである』


フランスが、人類の歴史において、また現代の世界において、
どれほど巨大な存在であり、重要な役割を担っているかは、多言を要さない。
であればこそ、世界中の人々が“トリコロール”を掲げて犠牲者を悼む、
その祈りがどれほどの意味を持つかは、おのずと理解できるはずだろう。

パリだから特別なのではない。
他のなにかとの比較する問題でもありえない。
訳もわからず、お追従しているだけの国には、理解できないとしても、
いまパリを悼むことは、すべてのテロの犠牲者を悼むことでもある。

なぜなら、「IS」や「大日本」が忌み嫌い、踏み砕こうとするのは、
まさに、「人類の、多年にわたる自由獲得の努力の成果」そのものだからだ。
ジハーディストらが攻撃したのは、「フランス帝国主義」などではない。
欧米で生活する移民、祖国を追われた難民、イスラム教徒の権利であり、
民族や宗教を超えて多文化共生を目指してきた、「多年の努力」に他ならない。

だからこそ人々は、「自由」「平等」「友愛」を掲げる。世界は祈る。
フランスよ、ふたたび道を踏み外し、みずからの理想を冒瀆するなかれ。
「過去幾多の試練に堪え」ぬいてきたように、いまこそ持ち堪えよ。
歴史に巨歩を刻んできた、あなたの尊い役割と責任を思い出せ。
極度の緊張と恐怖が、理性と良心を粉々にしてしまえばこそ、なおさらにだ。

フランスだけではない。
国際社会はいま、最大の試練に直面している。
だがそれは、『テロとの戦い』ではない。
無秩序と不公正を根絶し、憎悪と不信を克服する闘いである。
敵は「IS」ではない。
若者たちを非道なテロリストに改造した、過激思想である。

イスラムの仮面をつけた過激主義の、無差別殺戮や自爆テロによって、
報復としての「対テロ戦争」によって、どれだけの血が流されてきたことか。
わたしたちは極東の島で、かろうじて生きのびているに過ぎない。
しかし安逸な日々が終わるのも、時間の問題ではないだろうか。
人の心は脆い。戦争に至るまでは、あっという間かもしれない。

最も確かなことは、あれら「イスラム国(IS)」を名乗る殺戮者らは、
決して抑圧された中東民衆の代弁者や、イスラムの英雄ではないことだ。
「IS」にとってシリアへの空爆や市民殺害などは、口実に過ぎない。

世界中のイスラム教徒は当然、パリの無差別テロを無条件に非難した。
差別からわが身を守るために、そう言わざるを得なかったと勘ぐるのか。
イスラエルのガザ攻撃に世界中が憤るのと同じ、良心の発露であるものを。
共有された「#NotInMyName」が、どんな想いからの抗議であったことか。 

この地球には、イラク戦争に強く抗議しているアメリカ市民も大勢いれば、
芝居じみた報復に反対するフランス国民も、もちろん存在するのである。
航空機を爆破されたロシアの人々も、虐殺に等しい空爆を批判している。
これら低みに生きる人々が、いま崩壊する世界を全力で支えている。
人間を選別し、分断し、相争わせる、もろもろの壁を崩してゆく時なのだ。
ところが日本人は欧米憎しで、テロリストに理解を示す有り様だ。

特定の国や民族や宗教に、巷の雑学やネットで仕込んだ妄想を投影し、
賢しらな偏見を撒き散らし、憎悪したり擁護したりは、もうたくさんだ。
無知ゆえのイスラム嫌悪や、紋切り型の欧米批判に、いつまで興じるのだろう。

対岸の火事を眺めながら、「わたしら敵じゃありません。お見逃しを」と、
平和の白旗を掲げていれば無事にやり過せると、本気で考えているのか。
手を引かれたり、背中を押されたりするのではなく、すすんで舞台に上がれ。
真の平和主義者は、いらずらに「戦争反対」だけを叫んだりはしない。
戦争を起こしたくなければ、戦争について、軍人よりも深く学ぶものだ。

憲法を破壊してまで、「対テロ戦争」に積極支援と参加を申し出るような、
ここぞと脅威を煽って、国民への監視と締め付けを強化したがるような、
勇ましい首相のふるまいなど、決して日本国民の総意ではないことを、
わたしたちは国際社会に、明確な民意の形で示さなければならない。
その機会はすぐに来る。覚悟すべきだ。今度こそ負けたらもう戻れないと。

湯川遥菜さんと後藤健二さんの首を、ナイフで切り落とした黒覆面の男、
“ジハーディ・ジョン”もまた、先ごろ米軍の空爆により殺害されたという。
彼らの生きてきた人生が、最悪の形で交差し、みな無残な最期を遂げた。

あの怖ろしい日々、日本人は立って、“I am Kenji”と訴えたことを、
今では誰も思い出そうともせず、すっかり無かったことにしている。
パリの、あるいは、中東では日常的でさえある数多の犠牲者に対して、
“I am Kenji”の信念で心を寄せた日本人が、どれだけいたろうか。
彼の名はむしろ、アラブや欧米の人々の心の中に生き続けるのだろう。

立憲主義の破壊にではない。
集団的自衛権に抗議して、わが身を焼いた日本人がいた。
若者らを神輿に担いだデモ群集の胸に、人を焼くあの炎は燃えていたか。
デモも、テロも、“I am Kenji”も、人の生死も、渾身の訴えも、
一時的な興奮や衝撃に過ぎないなら、すぐ煙のように消えてゆくだけだ。

後藤さんにせよ、名も知らぬ焼死者にせよ、みずからの惨殺死体や
凄惨な死の一刻が、衆人に公開されることが、戦争への最大の抗議であり、
同胞への最後の願いでもあった、ひとりの人間の痛ましい想いを、
なぜ私たちは、「民衆の血の記憶」として、共有できないのだろうか。

すべては軽い。すべてが消費だ。流行と雑学だ。お楽しみだ。
なにごとも、終わったら、また始めればいいと思っている。

「民主主義ってなんだ?」って??? 
デモか?丁寧な説明か?法的な手続きか?シールズか? 
アジアの民主化を闘った学生は、民主主義をこう呼んだ。
『民主主義(あるいは自由)とは、血を吸って成長する樹木である』。
そんな物騒なものなら、熨斗をつけて返すか?

だが民衆による、偉大な歴史の伝統を持つ国ならば、例外はない。
敵であれ味方であれ、人間の流した血を吸い込んだ大地
そこに生え育った果実の苦味を知らない者には、
「自由」の価値など、理解しようもないのだろう。

ただし、沖縄だけは違う。
血に洗われた海と島が、いのちを育むからだ。
「歴史」とは過去の年表ではない。
幾世代もの人々が流した血のことである。

20世紀の人々が夢見た進歩的な未来は、無残に潰され、暗雲に閉ざされた。
いま、およそ人間の持てる最も凶暴な蛮性と迷妄、獣的本能までもが、
過激な狂信と合体して、21世紀の果てしない戦争の主役に躍り出た。
そして報復が繰り返される。この混迷はいつまで続くのだろうか。

そこに神はいない。
神の衣装をまとった、人間の暴力と欲望だけがあるだけだ。
野蛮と野蛮とがぶつかる殺し合いには、大義も勝利もない。
いくさが行なわれるのは、武器が売れるからである。
このおそろしい戦争を、生き延びることができたなら、
人類はかならず、ひとつの悟りに達しなければならない。
仮面の正体は暴かれ、醜い偶像は倒されるだろう。

「神」の名による圧制、「自由」の名による隷属、
「平和」の名による殺戮は、地上から一掃されなければならない。
血を流した敵は、真の兄弟姉妹となる。 
地球上の宗教は手を携えて、新しい時代を拓くために、
よりふさわしい高みへと、歩み入ることになるだろう。

そんな未来を、だれか目にすることができるだろうか。
そのとき、日本人には、どんな貢献ができるのだろうか・・・


ショパン夜想曲(ノクターン)第1番変ロ短調 

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