Dark night of the soul Secret path to the Light

梅雨の花
2014-07-15 Tue 00:43

日本では、6~7月は雨季にあたります。
5月の終わりごろ、初夏の爽やかな空気がふと変わって、そわそわと風が流れ、
水の皮膜のような雲が、幾日も空を覆って陽差しを遮り、雨をもたらします。
雨の降らない日の、光を含んだ雲や、その切れ目からのぞく、眩しいレイリー散乱。
闇夜には、雲間に見える星や月の姿にも、親しさが増します。

地方によって異なりますが、ここでは6月に入ってから田植えをはじめます。
茶のお師匠さんに、「田毎の月(たごとのつき)」という銘を、教わりましたが、
あぜ道を歩きながら、この季節の夕の風情に、まことに相応しいかと。

一方で晴れた夜が少なく、星見には都合が悪いこの時期の天文台では、
望遠鏡の大掃除をはじめ、各種のメンテナンスが行われるようです。

陰暦では、6月を「水無月」をいいますが、梅雨に入ったばかりの6月頃は、
むかしならまだ「皐月」。長雨のことを、五月雨(さみだれ)ともいいますね。

日々の暮らしに、月の満ち欠けにあわせた陰暦や、太陽の道すじを季節ごとに分けて名付けた
二十四節気を取り入れてみると、人なる存在が、天の運行と共に生きている、実感がわきます。
このほかにも、二十四節気を補って作られた「雑節」も、意外にお馴染みです。

というわけで、6月の節気としては芒種と夏至があり、雑節としては入梅。
7月になると、まず雑節の半夏生があり、いよいよ小暑に入ります。
そう、旧暦では5、6、7月が、「夏」にあたるのです。

では、季節の花をみてゆきましょう。


あじさい
【紫陽花・アジサイ】

梅雨の花といえば、やはり雨に濡れる紫陽花ですね。
むかしから紫陽花、額紫陽花、玉紫陽花、小紫陽花、甘茶など、種類も多く、
花期も長く、なかでも紫陽花は、七変化とよばれるほど、花の色が変化します。
もともとは、「あづ」(=集める)「さい」(真の藍)に由来する花名で、
青い花が集って咲く様子を呼んだそうです。
写真は、数年前に挿し木をしたものが、今年はここまで育ったところです。


2くちなし
【梔子・クチナシ】

梅雨空の下に咲く、薫り高い、清楚な白い花で、一重のもの、八重のものがあります。
漢字では「梔子」と書きますが、一説には、実が熟しても裂開しないことから、
「口無し」というともあります。冬には赤い実が熟します。


みずひき沖縄ガラス花瓶 

この涼しげな花瓶は「琉球ガラス」といい、沖縄を旅行した友達のお土産です。
花はペチュニア、姫紫苑、初雪草、水引など、椋をもたらす組み合わせです。


つきみそう
【昼咲月見草・ヒルザキツキミソウ】

月見草とはいえ、お昼にも咲いている「昼咲月見草」ですが、興ざめなわけではなく、
薄紅色の大きな花びらが、にっこり笑う子どものように素朴な花です。
待宵草(まつよいぐざ)や夕化粧(ゆうげしょう)なども、おなじ仲間で、
その多くが、夏の夕に開花して、夜間咲きつづけ、翌朝には萎む、一日花です。


金糸梅
【金糸梅・キンシバイ】

くぐもったような空の下で、金糸梅(きんしばい)が満天星のように咲く様は、見事です。
よく似た花に、同じく黄色の、未央柳(びょうなやぎ、ヒペリカム)があります。

このころは、鉄線(クレマチス)も華やかなのですが、今年はあまり咲きませんでした。


かしわばあじさい
【柏葉紫陽花・カシワバアジサイ】

柏のような葉が茂る間から、葡萄の房のように垂れ下がった、真白の花が豪華です。
花はひと月ほど咲きますが、次第にグリーンからピンクにも変化して、深みを与えます。
ドライフラワーにもなりますし、晩秋には紅葉も楽しめます。

6月中旬の水辺には、蛍が舞います。むかしは近くの用水にもいたのですが、
大型ショッピングモールができてからは、姿を消してしまい、いまでは育成した蛍を
毎年公園などに放していますが、さすがに人がぞろぞろ集まって、騒ぎながら、
あれは源氏、これは平家と言われると、もう風情もなにもありません。
蛍とは「星垂る」のこと。そこはかとなき光は、夜の街明りと車音に沈みます。


ゆりずいせん、しもつけそう

百合水仙は、お花屋さんでもおなじみの、アルストロメリアの原種だと言われます。
下野(しもつけ)は、鋸葉の枝先に、つぶつぶの小花をたくさんつけています。


やぶみょうが、ききょう

藪茗荷(やぶみょうが)は、長く大きく広がる、ざらざらした葉の間から
すっくと立ちあがる茎の先に白い花をつけ、終わったあとに、青み掛った黒い実ができます。
桔梗(ききょう)は、秋の七草のひとつで、風船のような蕾から、星型の花が開きます。

このころ・・・四月に、あれほど美しい花をつけた桃や李が、たくさん熟れました。
(写真がなくてすみません)

たちおあおい
【立葵・タチアオイ】

立葵(たちあおい)は、梅雨葵とも呼ばれるように、雨季を彩る多年草です。
人の背丈よりも高くなり、花色もピンクのほか、白や紫、黄色などもあります。
すくと立った茎に次々に咲いてゆく花が、梅雨の青空に映える頃、夏至になります。


なつつばき
【夏椿・ナツツバキ】

源平合戦の舞台ともなった、藤戸のお寺の庭に、「沙羅樹」としても伝わる夏椿で、
毎年、夏至のころに客殿が開放され、平家物語を聞きながら、純白の花を観賞します。
梅雨椿とも呼ばれる、儚い命の花は、そのままの形でポトリと落花します。

夏至が近づくにつれ、気持が昂揚しないではいられません。
一年でもっとも日が長く、太陽が高くなる、季節の頂点なのですから・・・
日本では梅雨なので、ミッドサマーの雰囲気は味わえませんが、
若いころは小説などに登場する、「すばらしい北国のながい黄昏」とか、
それに続く「極光の夜」に、ずいぶん憧れたものです。


やぶみょうが 四海波籠

夏の花は、籠に生けてみると涼しげです。
この籠は「四海波籠(しかいなみかご)」といい、重なる波を表した
竹細工の素朴な作りが気に入って、買いました。(フリマで300円)
花は、藪茗荷(やぶみょうが)、都忘れ、バンブー、椿の実、金魚草。


はんげしょう
【半夏生・ハンゲショウ】

「半夏生(はんげしょう)」とは、雑節のひとつで、夏至から数えて11日目、
太陽が黄径100度の点を通過する日として、毎年7月1日か2日頃に当たります。
そのころ、茎の先のほうの葉の表が白くなることから、片白草ともよばれ、
半化粧、半夏生ともいわれる、地味ながら季節の目印になる植物です。


つくばねうつぎ
【花園衝羽根空木・ハナゾノツクバネウツギ】

道路や公園の生垣などでもよく見かける、アベリアとしても知られる花です。
花期が長く、猛暑にも強く、刈り込みにも強く、秋の終わりまで、
白い小さな、ラッパのような花が、旺盛に咲き続けます。

半年が終わる6月の終わりには、各地の神社では「夏越の祓」が行われ、
茅の輪潜りなどの行事がおこなわれるので、近所のお宮にも行ってみました。
今年の6月は、梅雨とはいえ、天の底が抜けたような、篠衝く雨が降るわけでもなく、
それでいて空はずっと曇り、寒気が入って気持ちよく、この祭りの夜も、
雲間に半月が見え隠れする、楠の杜の社で、家族連れが和やかに過ごしていました。

そして、7月1日。今年はじめて、蝉の声を聞きました。

はす
【蓮・ハス】

泥のなかに咲く清浄な花、水を弾く葉。仏さまの座としてのお花です。
ほかにも水芙蓉、池水草とも呼ばれ、真ん中の花托を蜂の巣にみたてて、
古くから「ハチス」ともよばれ、「ハス」はそれが転じたものです。
地下茎は、食用の「蓮根」になりますね。

このころ、岡山の「後楽園」という大名庭園では、
「観蓮節」という、早朝に開く蓮の花を訪ねる行事があり、
この写真は、そのとき撮影した蓮の花です。

蓮池
【大賀蓮】

後楽園の、大賀蓮の池です。
早起きして、こんな場所まで繰り出さなくても、蓮根栽培の畑もあるのですが・・・
でも蓮が開くときの、ボッという音は、いまだに聴いたことがありません。


後楽園 紫錦唐松

「観蓮節」の、茶席の床に飾られた花です。(ワタクシが生けたのではありません)
桂籠に、紫錦唐松、桔梗、岩菲、草紫陽花、人参木など。


底紅の無窮花
【木槿・ムクゲ】

7月に入ると、いまかいまかと楽しみなのが、木槿の花です。
風炉の花の主役として、9月の終わりごとまで咲き続けますが、
私には、無窮花(ムグンファ)と呼ばれる、韓国の花のイメージがあります。
古来より、韓半島は「槿花郷」と呼ばれ、民族の生活を彩ってきました。

しかし今年はどうしたことか、わが家の木槿は、4月に芽をつけたころから
あまり元気がなく、それでも枝を高く高く、空に伸ばしていたのですが、
7月に入ったある日、花もつけることなく、自然に枯れてゆきました。
まるで花の意思であるかのように、潔い終わりだと思いました。
いろんな意味でわたしは、木槿の枯れたこの年を、忘れないと思います。

不思議にも、それと呼応するかのように、ある知人の方が、
汚れなき無碍の光をまとって咲き続ける、無窮花への祈りをこめて作られた、
詩を拝することができましたが、涙なしには読めぬほど、深い想いに満ちた漢詩でした。


むくげ

木槿には、一日花のイメージがありますが、じつはこれで終わるのではなく、
数日は夕に萎んでも、翌朝には咲く力があり、真夏の青空に生命力を誇ります。
木の足もとに落ちた花殻の重なりに、滅びの姿を重ねる趣もあるようですが、好みません。
八重のものは、さらに長く楽しめますので、身近にあれば、ぜひ観察してみてください。
色は真白もあれば紫もあり、けれどもいちばん愛されるのは、白地に底紅でしょうね。
おなじく夏の花である、芙蓉やハイビスカスも、同じアオイ科の仲間です。


あじさい(薄紅)四海波籠

四海波籠に、紫陽花、藪茗荷、桔梗、金魚草、初雪草、天門草を入れてみました。


ねむのきのはな
【合歓木の花・ネムノキの花】

通りがかった公園の合歓木に、細やかな淡紅色の花が満開でした。
和名のネムは、夜になると葉が閉じることに由来するそうです。
夫婦和合の歓びを表す、葉も花も優しい姿をしています。

かんぞう
【藪萱草・ヤブカンゾウ】

降る雨に似合う花は、まず紫陽花ですが、萱草の明るい雰囲気も好きです。
憂いを忘れさせてくれる花という意味で、「忘れ草」とも呼ばれます。
細長い茎の先端に、百合のような花をつけますが、藪萱草は八重咲きで
おなじ仲間には、野萱草、姫萱草などもあります。


ゆうすげ
【夕菅・ユウスゲ】

夕菅も、萱草とおなじユリ科の仲間で、おなじ頃に咲く花ですが、
萱草と交代するうように、夕になると開き、翌朝には萎みます。
萱のような葉の間から、いつの間にか太い茎が伸びて、その先端に、
黄色い百合のような花をつけます。花色から単に、黄菅ともいいます。


やぶかんぞう宗全籠 昼 

宗全籠に、身近な夏の花をいっぱい入れてみました。
額紫陽花、藪萱草、夕菅、撫子、藤空木、小萩、水引、
洋種山牛蒡(ようしゅやまごぼう)、矢筈芒、金魚草などですね。


ゆうすげ宗全籠 

同じ籠の夕の様子です。藪萱草は萎み、夕菅(ゆうすげ)が開きました。


ひおうぎ
【檜扇・ヒオウギ】

葉が扇ように広がることに由来する名前ですが、いかにも夏らしい花です。
あとにできる黒い種は、「ぬばたま」と呼ばれ、「夜」に掛る枕詞でもあります。


葡萄
【葡萄】

洗濯物干しに、そのまま葡萄の樹を絡ませてみると、こうなりました。


さるすべり
【猿滑・サルスベリ】

猿もこの樹から落ちるほど、滑らかな木肌という意味ですが、
7月から9月にかけて長く咲く、紅色や白色の花もまたみごとで、
百日紅(ひゃくじっこう)とも呼ばれています。

そろそろ向日葵も、慎ましく咲き始めました、
足元には、藪蘭や蛇の髭の小花、エノコログザやカヤツリグサも繁茂して、
南天や珊瑚樹は、すでに固い実をつけ始めています。
もうすぐ梅雨が明け、夏休みに入ります。


(星の余談)
今年も7月7日に、七夕の行事がありました。
けれども残念ながら、いまの7月7日は、本当の七夕様ではないのです。
現代日本人の、季節や自然に対する無感覚が、ここにもあるように感じます。

雨季の空には星も見えず、運よく晴れても、織姫・牽牛はまだ、東の空に昇ったばかり。
頭上に広がる無限の虚空に、雄大な天の川が流れる風情には程遠いのです。
これも新旧の、暦のずれから来る季節感の矛盾のひとつで、
七夕は本来、秋の季語、旧暦にあわせて祝う、伝統の星祭りです。
仙台の七夕祭りのように、ひとつき遅れのほうが、季節にはふさわしいでしょう。
今年の伝統的七夕は8月2日。旧暦の7月7日に当たります。

梅雨の雲が消えると、五月雨星はすでに傾き、天の柄杓の水も乾いたのか、
戦の神(火星)は、正義の女神(おとめ座)を、ようやく振り切って
ただひとつだけ、天の動きに逆らうかのように、獣帯に陣取って、
ふたたび、蠍の炎と競い合うようになります。それでは・・・・・

昼は涼をさそう花たちの、夜は銀河と流星の季節を楽しみながら、
お元気で、真夏をお過ごしください。

M106 Across the Spectrum
M106 Across the Spectrum
Image Credit: X-ray - NASA / CXC / Caltech / P.Ogle et al.,
Optical - NASA/STScI, IR - NASA/JPL-Caltech, Radio - NSF/NRAO/VLA

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