Dark night of the soul Secret path to the Light

Ascension to Eternity
2014-08-23 Sat 21:23




宇宙のエヴァ


フレシサム、赤ら顔のお隣りさんの、
時を忘れた草原のふところは、
みずうみのように、万夜の身体を、
すっぽりのみこむ母さんで、
カムイシンタの、幼な児たちは、
月の籠もれる雪の森、ほのかな炉辺、
火のおばあさん神の、膝に抱かれて、
ゆらゆらと、星の揺り籠に夢を結ぶ。

けれども、商人が砂漠を踏むように、
戦士が財宝を貪り、囚人が森を拓くように、
金色にさざめく、プラーナの海を突き破って、
天上を侵犯した冒険者は、ひとりもいない。
そんなことをしたがってみせるのは、
石から生まれたばかりの、猿たちだけだ。

人の知覚は、光に盲いて、
肉は戸惑い、激しく震える。
光よりも高きもの、
不可知の雲の放電。
蓮花の真ん中に、
仏陀の智恵が宿るように、
おだやかな闇の、辺土には、
霊の孤独をいたわる、此岸の実。

いまも、憶えているか? 
どうにか、思い出せるか?
あの高い空は、とおいむかし、
わたしたちが捕えられ、
炎を立てる薪の上で、
最期に見つめた碧空。

神の沈黙。
宇宙の静謐。
慕わしい天の篝火、無音の虚空に、
思念ははや、言葉を有さず、
愛もまた、肢体を用いることなく、
瞳も眼差しも、腕も指先も、姿形も、
衣服も、食物も、住居も、財布も、
どれもみな、そこに投げ出し、
ぜんぶ置き去りにしておいで。

光と陰が反転し、
響きあい、全一に溶け合う、
霧よりも細やかな、
姿なき、在るものよ。

ただひとり、彼女だけが、神に招かれる。

残された地の子らの祈りが、
聖なる炎の、上昇を見まもる。

かもめよ、
星の鏃、涙の散光、真珠、
満ちてくる潮よ。
太陽と月にも劣らぬ、
ロシアの娘。

宇宙のエヴァ。
もし、あなたがなければ、
わたしのいまも、ここになかった。
燃える渇きも、癒されなかった。



ワレンチナ・テレシコワ(Валенти́на Терешко́ва 1937年~)  
  世界初の女性宇宙飛行士。旧ソ連。1963年6月、ボストーク6号に搭乗。
  71時間で地球を49周しながら、ボストーク5号とランデブー飛行。

  いま残された世界において、テレシコワほど神話的な存在はないだろう。
  宇宙空間での単独飛行に成功した、数少ない一人でもある。(女性では唯一)
  あらゆる意味と側面で、彼女の達成は、全世界の女性たちの、魂を覚醒させた。
  旧ソ連の目指した輝かしい理想と、人類の希望を体現した彼女は、
  いまもロシアの至宝であり、世界中から敬意を集める。
  



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