Dark night of the soul Secret path to the Light

予感する春
2014-03-29 Sat 01:04

3月29日に写真のみUPしておいて、本文を記述する余裕がなかったのですが、
それからほんの一週間で、春は日を待たず、つぎつぎに新しい姿を見せてくれます。

永き日の 暮れなずむ径に 菜の灯り

ゆすらうめ

これは、ユスラウメ。隣家との境に7本あります。
わが家の果樹のなかで、真っ先に咲く花は、サクランボ(実桜、みざくら)ですが、
その次に、このユスラウメと、スモモの花が咲きます。

ユスラウメの花は可愛らしく、細い枝に密に連なる宝石細工みたいです。
漢字では、櫻桃とか、梅桃とか、山櫻桃梅とか・・・いろんな表記があるのですが、
この花の、桜梅桃のようでもあり、また異なる・・・妙なる魅力が伝わります。

そして6月頃、サクランボのような形をした、朱い果実を就けるのですが、
思えばサクランボも、「桜桃」と呼ばれますね。日本語のユスラウメとは、
単純に樹を揺すってみたら、実が落ちるからだそうですが・・・花も実も繊細です。
「揺果花、揺梅花」とも表記することを、漢詩の先生に教わりました。

はなのかげ ほそきかいなに つらなりて みそらにたかき ゆすらうめよし

  
あみがさゆり つばき4 ふいりすずらん

この記事を「予感」と題したのは、それがいよいよ、桜が開花する直前だから。
桜が咲き始めてこそ、日本の春はほんとうの春になり、戻れない実感に満たされる。
でもそれまでの「春のあわい」ほど、霊妙さの窮まる瞬間はあるまいよ。
桜も桃も、花の開く直前の蕾の色合いが、なんともいえないのである。

春の彼岸を過ぎると、草花はついに目を覚ます。
裏庭の小径の両側には、各種の水仙花、クリスマスローズ、貝母(バイモ)、
ハナニラ、スノーフレーク、ムスカリ、菜の花・・・などなどが
とても慎ましく咲いており、まだ葉をつけていない、ナンキンハゼとエノキと
柿の樹の、枝間を通して射し込む春の光と風のなかで、揺れています。
(裏庭の全体写真がないのは、どの角度で写しても、
 物置小屋のようなワタクシの部屋が、丸見えになるからです)

左・・・貝母(バイモ、あみがさゆり)、クリスマスローズ、椿
中・・・連翹(れんぎょう)、土佐水木(とさみずき)、椿、霞草
右・・・スノーフレーク(鈴蘭水仙)

とさみずき3 つくし3

土佐水木は、マンサクやサンシュユに続いて、春を告げる黄色い花の代表です。
駐車場にあり、その足元はフキやミツバやドクダミの園になり、つくしも生えます。


しゅんらん2 馬酔木

春蘭は野生蘭の一種で、わが家の日陰に密生しているのですが、
なんといいますか、あんまり親しみがわかない・・・だって
見れば見るほど、妖精か異星人みたいな、風情ではありませんか。

馬酔木(あせび・あしび)。白や薄桃色の、鈴のような小花をつけます。
万葉集には、恋心を馬酔木の花に喩えた歌があり、微笑ましいです。

3沈丁花 はくもくれん3

沈丁花(じんちょうげ)の香りこそ、予感する春そのものです。

白木蓮(はくもくれん)は、早い年には3月に入るとすぐに咲くのですが、
今年は大変遅れて、下旬になってようやく、たくさんの白い蝋燭が灯り
天に立ち上るような、華麗なるマグノリアの姿を見せてくれました。

すそんふぁ1 ふきのとう

水仙はむかし、いろんな種類を植えましたが、いま残っているのは4種類だけ。
そのほとんどが日本水仙です。では・・・これは喇叭水仙ではないようですが、
なんなのでしょう?あまりに種類が多すぎて、ワタクシにもわからないのです・・・

蕗の薹(ふきのとう)はもう終わりを迎えますが、
咲き初めたスモモの枝と菜の花をあわせて生けてみました。
菜の花には、・・・黄金の輝きにもまさる、心があります。

はなにら しろばなたんぽぽ

ハナニラ(花韮)は、明治時代に観賞用として入ってきた園芸植物ですが、
繁殖力が強くて、畑などに一面咲いているのを、見かけることもあります。
ニラのように細い葉には、それこそニラのような香りを放ちますが、
整然とした6弁の、淡い紫色の花は、ベツレヘムの星とも呼ばれます。

この「シロバナタンポポ」は、西日本に多いとのことですが、
私には、タンポポといえば、この白のなかに黄が座る花のことです。
どうでしょうね、東日本でも見られるでしょうか?

れんぎょう3 すみれ3

連翹(れんぎょう)の力強くて、鮮やかな黄金色は、春の不安を忘れさせてくれます。

春の妖精・スミレは、いまどき、どこで見かけるでしょうか?
畑にもありますが、道端のアスファルトの割れ目や、水のない側溝の片隅にも、
おどろくほど群生していることがあり、その可憐さには、胸が詰まされます。
生命力が強いので、タネを播いておけば、翌年から楽しむことができるでしょう。

李

これぞ桜の咲く直前の、わずか一週間ほど、夢のような姿を見せてくれる
すももの花です。写真では解りにくいですが、樹は2本あります。
雪の峰のように、犯し難い気品があり、撮影した翌日の春の嵐に、
はや花吹雪となって舞い散り、いまは新しい葉に覆われています。

春のただ 七日のあいだ 神宿り ふれまじ咲くよ すももの花は 

すももの花吹雪

春の嵐に舞ったすももの花が、まるで純白の雪のように、畑の地面を覆い、
菜の花もタンポポも、ホトケノザもカラスノエンドウも、花の雪化粧を装いました。

月のない 春の夜更けに 雪の峰 嵐に崩れ 白き花舞い     

さてここからはクイズです。写真が拙くて申し訳ないのですが・・・
ここに挙げた6種類の花は、それぞれなんの花でしょうか?
ナシ、スモモ、モモ、サクラ、ユスラウメ、ウメのなかから、選んでください。

ペ - コピー すん

P3020331.jpg え

ちゃ ぽ

菜の花が咲き乱れる畑のまんなかに、桜の樹があります。
これはまだ5分咲きの頃の、夜の姿ですが・・・いまや妖艶なる姿を見せております。
その記事は、また数日後ということで・・・今夜は、花の夢をご覧くださいませ。

2よるのさくら 5分咲き


では、おやすみなさいませ。

(花に呆けてる場合じゃないだろうに・・・)
(いいんです。ワタクシメの仕事なんだから・・・)

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紅梅と月世界
2014-03-16 Sun 23:16

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昨夜の・・・満月の夜の、庭の梅です。


いにしえの海を越えて、わが国にもたらされ、しっかりと根を降ろし、
その気品と芳香で、人々の心を潤しながら、歴史と文化を彩ってきた梅・・・

そうしたことどもを、思い巡らせながら、夜の庭を歩きました。


夜の梅



梅にそなわる品位が、その落ち着きと、かぐわしさにあるとすれば、
桜の、夢幻のごとき妖艶さとは、対照的だといえるでしょう。

桜が、春の女神の化身であるならば、
梅とは、あくまで人であり、悟りを開いた仏であるよりも、
人としての徳の高さと、叡智を身につけた、君子の馨しさが感じられます。


満月の夜 P3180373.jpg


夜も更けたころ、ひとり庭に降りる。

紅の梅の、重なる枝の透き間から、月の光が漏れる。

梯子を掛けて、樹に身を寄せ、香に抱かれて、満月に遊ぶ。

ああ、まるで、さざめく虹の入り江に、素足を浸しながら、

梅の、故郷なる国の、はるかな巡礼が語る、潮騒を聞くようだ・・・

無音の虚空の、しじまのなかだけに、奏でられる、調べがある。


「梅の香の 御簾をくぐりて 虹の江に 君を訪ねん 望月の夜


さまざまな想いが交錯しますが・・・

やはり、どんな言葉の網にも、捕らえてはならぬ・・・光景があるようです。
わたくしごときには、手も届かぬ梅花と、月の世界です。

(虹の入り江・・・月の地形のひとつ。地球にあるような、海や入り江ではありません)


梅と満月

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冬の終わりに・・・・・駄句と写真で綴る「夜話」
2014-03-06 Thu 03:17

まだ風は冷たいけれど、一雨ごとに春めいてゆく。

でも、冬が去ってゆく、この時期はさみしい。
冬の凛冽な、美しさと厳しさ、緊張感が、とても好きなんだ。
寒さがゆるむと、気持も弛緩して、脳天気がおとずれる。

今年になってから、俳句?を始めてみた(決まり事は、無視します)。
さりげない日常の印象を、素朴な言葉に刻みたくなった。
私の文章は、もう冗漫すぎて、書き始めたら果てが無いですから。
まだ頭で作っている段階だけれど、しばらく続けてみるつもりです。

では、臆面もなき駄句で綴る、2013~14年の「冬の夜話」。
(イメージ写真を付けましたが、ないものもあります)


梢を照らす月。フォルダを整理していて見つけた写真。日付を見ると、秘密保護法が成立した数日後だ。やりきれない気持を持て余して、公園の並木道を歩きながら、ふと見上げた空に、携帯を向けたのだろう。憲兵も銃剣もなく、竹槍もモンペも要らないまま、ふたたび軍国の世が来たんだなあ。無情の光よ、なれど・・・。

良し悪しの ひとを隔てぬ 無量光

安倍晋三も、山本太郎も、私たちも、みな同じ原子で出来ている。
人は誰もが、大いに騒ぎ、焦り、荒れ狂い、いつも急いで、かならず過ちを犯す。
しかし天の意は深い。さらなる試練を与え、犠牲を求め、人を鍛えあげる。


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暦の上(というより二十四節気だが)での、「立冬」は11月初旬。ここ瀬戸内地方で、本格的に冬を感じるのは、菊花が終わり、紅葉も散り終えて、日足がいよいよ短くなる、12月に入ってからだ。樹々が裸になってしまうと、おどろくほど視界が開けて、空がずっと広がる。

薄明を残して、星を纏う空の、西の一隅に突如、小さな灯が現れる。
中国の宇宙ステーション「天宮」だ。ISSよりもずっと微かな光が、
宇宙空間を移動する様子を、日本の、枯れ葦原より仰ぎ見る。

夕星に 天宮の航る 冬景色


除夜の鐘。年を越えて深夜、老父母の代理で、近所の神社に初詣する。巨きな楠木に、社全体が覆われた鎮守の森は、子どもの頃の遊び場。ここに棲む、ミミズクの声を怖れながら、夜は勉強していた。だがかつてこの神社でも、兵隊に行く人への壮行式が行われ、日の丸が振られたのだ。そんなこと、生まれてこのかた、一度も考えたことがなかったが。

わかれ告げ 帰らぬ海に ひき裂かれ


元旦の午後は、阿智神社を訪れる。倉敷の一帯はかつて、阿智の穴海とよばれる遠浅の海だった。美観地区を見下ろす鶴形山も、島だったのだ。この丘にある阿智神社の三柱の女神さまは、オリオンの三つ星とのことで、海と航海の安全を見守る神さまだ。「星海守(ほしみまもり)」という、お守りを買う。時代は風雲急を告げる。いまこそ平和の海を!

ほしのうみ 守れる丘の つづみぼし

(日本では、オリオン座のことを、その形から「つづみ星」というらしい)


お正月の花といえば、蠟梅(ろうばい)。花びらは半透明で、蠟のような光沢があり、香り高い。内側の花弁は暗紫色。全体が黄色いのは素心蠟梅。まだ蕾の多い枝を頂いて、生けることから、一年が始まります。

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蝋梅を 手折りて 年の始めかな


冬の庭に可憐に咲いて、心を暖めてくれる山茶花。11月半ばごろ、白い花が咲き始め、紅は12月に入ってから。垣根などにも用いられる、気取らない庶民的な花。歌で聞くような焚き火の楽しみも、いまでは放射能汚染に奪われてしまった、日本の原風景のひとつ。

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いまはむかし 落ち葉に焼べた さつまいも


巨大彗星などと期待されたアイソン彗星は、太陽に接近したあげく、ジュ~と熔かされてしまったが、もうひとつのラブジョイ彗星は健在で、風騒ぐ夜空のかなたを、遠ざかってゆく。

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松風の 流離の底の ほうき星


凍れる季節の「青星(あおぼし)」とは、おおいぬ座のシリウスのこと。「焼き焦がすもの」を意味するほど、全天で最も凄烈な輝きを誇る。今年は木星が賑やかだが、神々の王ジュピターと言えど、この天狼星の強度にはとても敵わないね。そんな青い光を、白いサザンカの杯で受けてみる。

さざんかに あおぼし落ちる 夜半の瞬  

 
冬ほど自然界の光と影、その本来の姿と色彩を、鋭い感度で体感できる季節はないと思う。かつて生命を謳歌したものの朽ちた姿、落葉や、道端の柵や線路脇の枯れた雑草にも、いたわりの想いを持ちたいし、木枯らしに衣を奪われた冬木立が、寒空に映える姿にも心打たれる。早朝、霜に縁取られた冬草も、身を引き締める。

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寒空に セントエルモの 炎燃ゆ 
  

冬の葉の色彩は鮮やかだ。街角の花壇や小さな公園、家の庭でも、充分に楽しめる。ヒペリカム、カシワバアジサイ、キリシマツヅジ、ヒイラギナンテン、足元のシノブや、蔦のヘデラなどなど・・・秋の照葉にも劣らぬ。針葉樹も、寒気がその葉を、黄金色や銅色に変える。冬にこそ、艶やかな緑なす植物もある。目の覚める彩りを、見逃すのは惜しい限り。

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冬光り 黄金の衣 緋の産着 

命あるものの うしおは 葉をめぐり



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冬畑 翡翠の尾に化け きつねばな


清流の山里に佇む○○庵で、初釜に。雨が露地をうるおし、空は明るかった。山肌の南天は、錦のような葉に沢山の実を配して、それはそれは豪華絢爛。草木を愛でるのは、お金の要らない最高の贅沢なんだ。(写真は、残念ながら、わが家の南天です。あしからず)

88.jpg なんてん


雨の光沢 南天 山居を彩りて 


南天ばかりでなく、冬はあちこちで、鮮やかな朱い実が見られる。お正月に飾られる千両、こんもりと背の低い万両、ヤブコウジのことは百両というらしい。木は、北国ならナナカマドだけれど、この辺りではクロガネモチやソヨゴ、サンゴジュ、タチバナモドキなどだろうか。冬の真っ赤な実は、夏が残した小さな太陽だ。実家の庭のものは、どれも懐かしく愛おしい。

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朱い実に 夏を宿して 星と霜

ひとの興 彼には死活 鳥と実の



朱い実ばかりでなく、黒い実もある。ネズミモチは初夏に、タマツバキと呼ばれる白い穂状の花をたくさんつけ、冬に楕円形の黒い実が熟する。ネズミの糞に似ている・・・そうだが、気にせず装飾に使っている。潰れた実の風情までが、天然の葡萄を思わせる。まことに実ものは夏の名残。写真は、右がネズミモチ、左はシャリンバイ。

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ねずみもち 月に翳せば 黒葡萄


黄色い実もお馴染みだ。冬は柑橘類の季節。思い浮かべるだけで口が甘酸っぱい。「ミルガム(밀감)」とは、韓国語で「蜜柑」をそのまま読んだ発音。(みかんの実は、「귤キュル」です。お間違いなく)。恥ずかしい失敗談のひとつ。氷点下の厳寒にも、熱苦しく、大忙しで過ごした留学時代。

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三日月に ミルガム載せて さきを急ぎ


石蕗(つわぶき)は、秋に黄色い花を咲かせて、終わりの蝶を招く。冬には花のあとに、タンポポと同じような綿毛のついた種子ができ、風に舞って運ばれる。だが・・・このうち命を繋げられるのは、どれだけだろうか・・・

石蕗の花 川面の羽根に すがた変え


毎日通う、駅に向かう道端の枇杷(びわ)の木が、花をつけるのはこの季節。高い位置にあり、目立たない小花なので、気付く人は少ないようだが、傍らをせわしなく過ぎ越してゆく靴音が、夕刻の渇いた空に響く。(左が枇杷の花、右がヤツデ)

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枇杷の花 月影踏みて 石踏みて


おおぐま座の轅星(ながえぼし)とは、北斗七星のこと。一月の下旬の夜には、東北の空に昇る。雄渾な星座が見守る、ある家屋の二階から、柿の枝越しに灯が漏れる。心を病み、もう数年来、家から出てこない友達の影だ。

ながえぼし 柿の梢に 二階屋の灯


オリオン座の足元から、ひとすじの川が流れている。暗い星が連なって、蛇行しながら南下してゆくエリダヌス座。その最南端には、アケルナルと呼ばれる明るい1等星があるが、九州以北では水平線の下に隠れて見えない。わずか2度の高さのカノープスとともに、南天に輝ける、憧れの星のひとつ。

エリダヌス 川路の果ての アケルナル


八手(ヤツデ)と言う植物は、葉も花も奇妙な形をしていて、庭に魔よけとして植えられたり、葉は天狗の羽団扇とも呼ばれたりする。冬には枝の先に、白い小花を球状につけるので、勝手に「八手鞠」と呼んでいる。浮世離れした風情が、地球には勿体ない気がして、無理を承知で、別の天体に連れてゆきたくなる。

イトカワに 戻って植えたし 八手鞠 


葉牡丹は、キャベツの別品種を改良したもので、いかにも野菜の趣だが、紅紫色の葉の重なりが、真冬の花壇で、牡丹や薔薇にも劣らぬ味わいをだす。一角獣とはユニコーンのこと。清らかな処女にしか触れられないとか。いっかくじゅう座は、冬の空でおおいぬ座、こいぬ座の間に挟まれた目立たない星座だが、ここにあるバラ星雲(NGC2238)は、冬の葉牡丹を連想させてしまう。

葉牡丹で 一角獣を 誘いたや


街を歩いていると、寒の最中に、薄紅色の桜が満開だった。1~2月に開花する「ヒマラヤ桜」。高地の冷涼な気候を離れ、ビルと排ガスの谷間に移され、道行く人々のなかで、花はなおも季節に随順す。

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冬桜 鳥なき谷に 影ありて


冬に咲く薔薇は明るいけれど、それを牢獄に届けたからとて、鉄格子の鍵は壊れないのだ。無理やり作らされる笑顔や感謝の言葉ほど、酷いものはない。そんなものよりも、私たちは、あなたがたの自由を欲しています。

寒の薔薇 人屋の母娘に 春遠く


春を告げる花は、やはり梅。膨らむ蕾に、今年は立春までに咲くかなあと、いつも楽しみ。地面には、貝母(バイモ)や遅咲きの水仙、クロッカス、チューリップなどが芽を出す。松葉や団栗、山茶花の落ちた庭の苔も、ふんわりと新しい緑に替わって、陽に柔らかい。三寒四温、大地が目を覚ます。


苔はおもしろい生き物だ。苔玉に使うだけではもったいない。足元の小宇宙を観察してみよう。地の湿っぽい、ぬくもりが伝わってくるだろうか。

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地の衣 地の肌 日毎によみがえり


竜のひげ、蛇のひげとも呼ばれる、庭石の間や、垣根の足元に植えられる、細長く糸状の葉をもつ多年草は、冬になると、その懐に、青い地球のような美しい玉をつける。それが「竜の玉」。実ではなくて種子らしい。

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犬走り 路地に追い込み 竜の玉


侘助は、年の暮れごろから咲き始め、春まで長い。わが家の花は白侘助。他に紅や、赤地に白などもあり、椿よりも小さく、花数も少なく、いつも頭を下げるように慎ましい趣が、茶人に愛されてきた。伝説では、豊臣秀吉の朝鮮出兵のとき、加藤清正が持ち帰ったともいわれる。好きな花だが、そんな話には、遣る瀬無い気持になる。

わびすけ

古地離れ わびすけ庭に うつむけり 


2月、列島は大雪に覆われた。春の雪は、水分を含んで溶けやすい。真冬の粉雪がさらさらと花を覆えば、美しいレースの刺繍になるのに、重たい雪はたくさんの花を、一度に傷めてしまった。雪だるまは面倒なので、ユキウサギを作ってみたが、夕方までには消えてしまった。右奥手の花は山茶花。

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ひたひたひた 融けるよ 跳ねよ 雪うさぎ 


そして、咲き始めた梅にも、雪のひらが舞った。

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一枝梅 天日翳り 頬に雪


畑地もすっかり真白に覆われ、水仙も雪折れてしまった。青白い地上を、月が照らした。「猛吹雪の死闘」を繰り広げた人々を案じながらも、心安らかな想いがめぐる夜だった。

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音絶えて 銀の夜 月の水仙花


花梨は花も実も、樹皮が剥がれ上へ上へ伸びてゆく、硬い枝も大好きだ。秋の終わりに、ちょっと不恰好な実が熟し、部屋の芳香にしたり、砂糖漬けにしたものを、風邪の咳止めなどに使っている。選挙結果を嬉々と伝える、NHKをよそ目に、花梨を取る。

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かりんの実 失意の頬に 香ばしき


雪割草が今年も顔をのぞかせた。咲き始めは可愛くて、慎ましい。季節は一刻も停まらない。若い人たちの目覚めと、活躍を頼もしく思う。そばに朽ちた葉は、不甲斐ないわれらの世代であろう。

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雪割りて 萌えよ若草 紅の朝


2月の深夜は、もう春の星座が主役だ。今年は、火星がおとめ座に入り、土星はてんびん座に移っている。火星は4月にかけて地球に接近するので、おとめ座の真珠星(スピカ)と赤い惑星との共演が華やかだろう。この時期も夜の11時になれば、東の空に見える。

いくさの神 正義の女神に 心騒ぎ

(神話では、火星は軍神マルス、おとめ座は、正義の女神アストライア)


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昨年ロシアに隕石が落下したのも、この頃だったかな。その翌日、夜明け前の庭に出て、地球に接近した別の岩が、しし座の足元を掠めてゆくその下で、不埒な空想に浸っていた。2週間ほど前にも、小惑星が近くを通過したらしい。宇宙とは、なかなか物騒なところなのだ。(写真は木星。小惑星は肉眼では見えません)

ひと蹴りで 岩も落とすや 天の獅子


スミレは、ふつう4月になってから、庭の隅や道端に咲くけれど、これは少し葉が丸い形をしている、立壺菫(タチツボスミレ)で、2月にはすでに咲く。わが家では、ユスラウメの木立の下に群生しているので、寒中にはもう探しに行き、株が凍らないように枯葉で覆ってやる。2月になって、またたずねてみると、健気な花が、そこここに咲いていた。

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冬すみれ さがしに通う 枯れ木立

落葉わけて ふたつ見つけた 冬すみれ



庭のいちばん奥にある藪椿。2月の午後の、光と影が彩なす夢幻を、
もう、なんと表現すればいいのだろうか?

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如月の 庭に艶なり 黒椿


夜明けを映した曙つばきは、まことに傷つきやすい。
地上のありさまを嘆いて消えてゆく、月の溜息のように。

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あけぼのに 傷みて 白い 月落ちて 


蝶の季節にはまだ早いけれど、畑の菜の花も咲き始めた。

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菜の花に 木漏れる影と 陽のしずく

奪われし 野の春 恨み 千年や



寒あやめは、夏の菖蒲に比べると、ずっと小さくて、色も淡い。冷たい陽差しのなかで、蝶のように花弁を広げて、春を招く期待感が好きだ。

寒あやめ 揺れて胡蝶の 夢を誘い


人工の光も、そんなに悪くない。夜に静けさと安らぎを演出してくれる、やわらかい門灯に雨粒が反射して、庭先のクマザサの、見事な形を引き立てた。

宵の雨 灯に見遣る 斑入り笹


この頃には、畑仕事もずっと楽になる。長い冬を、植物はさまざまに姿を変えて過ごす。種子として、球根として、地下茎として、冬芽として、地面にぴったり張り付くロゼットとして。早春、夢のような世界が足元に広がる。フキノトウが顔をのぞかせる。ナズナ、ハコベラ、オイヌノフグリなどの小花が、数えきれないほど咲き乱れて、あたり一面を春の星畑にする。蒼白いかに座が天を渡る。(かに座の星団M44は、中国では「積尸気」。和名を「魂緒の星」)


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ふきのとう あわきみなもの たまおぼし

瑠璃の花 絹の花よ あしもとに こぼれる花や 春の星屑



2月の終わりに、福寿草が開いた。日が蔭ると花も萎む、春の儚きいのち。日に日に伸びて蕾をつけたバイモと、クリスマスローズ(寒芍薬)を飾り、重々しくベートーヴェンを聴く。

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福寿草 陽の光だけに 笑いかけ

寒芍薬 かたわらに聴く エグモント



生きている限り日本人として、3月を忘れない。来る年毎に、悲しみを新たにするだろう。あれから3年。いまではPMがどうのだって?朝鮮人を殺せだと?いまある日本を恥じ入るよ。人は忘れ、自他を誤魔化し続ける。だが自然界はすべてを記憶して、素直に涙する。二度と回復できない国土がある。暗い未来が待つ。死者たちは、こんな国を望んだのか。

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待ちわびた 花をいだきて 波に消えぬ

春あさく 原子野はとほく 空はけぶり   



花籠にいっぱい、生さぬ子らへの想いを託して、桃の節句を祝おう。

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春風に いさみ咲けよ 万の花






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