Dark night of the soul Secret path to the Light

春、桜の咲く前に・・・
2017-04-02 Sun 11:32

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春夜雪花

いまでも、この星に季節がめぐり、
季節に随順して、畑のすももの花が
今年もいっそう誇らしく、満開に、咲き零れようとも、
すでに夢幻は、終わりから数えてこそ、
より慕わしく、より惜しまれもしよう。

みずからのいのちの終わりを、
世界の終わりに、重ねてみるでもないが、
やがて向かうべき地平の涯が、
いやおうなく、視界に映るようになったいま、
常夜に入るまえに、もうしばらく留まる間、
沈黙を、新たに聴こえさせる、星霜の語らいを、
だれに咎められようと、やめないことにする。

どこから来た天使の受胎告知も、みな退けて、
おのれの子を生み育てる、太古からの処女は、
やがて雨季の、青が散乱する光粒を纏うて、
血膨れのような果実に、おのが身を変容させる。

若い日は遠ざかり、幾多のあらしに耐えた樹も
古木となり久しいが、月のない春の夜ふけには、
雪のような花衣の袂を、そぞろ歩きながら、
そわそわする予感に吹かれて、手を高く伸ばそう。

姿は見えないけれども、いくとしつき
わが命を彫刻してきた、苦悩する精霊たちが、
いつしか安らぎ憩う、清浄なる依り代を探すために。


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騒ぎのせいで、こちらは回避されたが・・・

(ツイッターより m TAKANO氏)
今日は4月1日。国有地売却疑惑が問題にならなかったら、
瑞穂の國記念小學院では“名誉校長安倍昭恵氏”も出席して
盛大な入学式が行われていたに違いない。
式では昭恵氏が挨拶し、安倍首相からの祝電も届いただろう。
現実に進行していることとの落差に
思いを致して見ることは意味のないことではない。

しかし…その一方では着々と。
  教材で教育勅語OK
  中学生に「銃剣道」
  パン屋はダメで和菓子屋に

エイプリルフールじゃないのが恐怖である。
それも、この国での出来事である。


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別窓 | poems | コメント:2
虹の夜  Pulse Unbreakable
2016-06-16 Thu 23:29

憎しみを憎しみで返すだけなら、
敵の力を倍増させるだけだ。
だが愛するなど、ゆるすなど、
到底できそうもない。
臆病者よ、
偽善者よ、
説教はもうたくさんだ。

正しさとあきらめの錯綜する、
みずからの重力に歪んだ視界が、
銃と爆弾ではなく、毒を盛る多様性の、
分別くさい寛容さと、無数の言い訳が、
非対称の関心と言及ではなく、
盲人の手を引く、盲人たちの教義が、
洞窟で瞑想する静謐のひとを、
とつぜん、魔境に陥れてしまったのか。
闇を否認するものが近づくとき、
正気は、狂気をもって身を守る。

真理が得られるならば、
宇宙のもっとも遠い星までも、
探しにゆきたい。
無限の力を得られるならば、
どんな険しい山巓にでも、
攀じ登ってつかみたい。

天の海原は堅牢な、無明の虚空ではなく、
星明りが船となり、縁起に導いてくれる。
それはいまここで、わたしが手ににぎる、
風の街路にゆらめく、蝋燭のひとつ。

気高い闇よ、
死者たちをいだけ。
夜の理性よ、
生ける霊魂を慰めよ。

孤絶して、涙さえも涸れた、
あまたの瞳にも、
とおい明日の涯には、
虹の色が映えるように。
わたしたちの心に翻る、
誇りたかい旗が、
破られない心臓の鼓動として、
いつでもどこでも脈打つように。


 *     *     *     *     *   


このたびの犠牲者が、だれであれ、なんであれ、
キャンドルを手に集う人々が、だれであれ、なんであれ、
ひとりひとりがこれからも。ともに歌い、ともに夢を抱く
わたしの姉妹であり、兄弟であり、家族だ。



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6月12日未明、米フロリダ州オーランドのナイトクラブで、
男が客に向かって銃を乱射し、死傷者は100名を越えたという。 

襲撃されたナイトクラブ「パルス」は、LGBTの交流施設でもあり、
だれもが歓迎され、安心感を得られる“サンクチュアリ”ともよばれる。

ゲイであることを家族に告げ、AIDSで死亡した弟を持つ姉が、
彼を記念し、その心臓の鼓動(pulse)を伝える思いで、設立したという。
この地域のLGBTコミュニティを、広く認知させるためでもあり、
ナイトクラブの他にも、教育プログラムが実施されているとのことだ。

一方で射殺された容疑者は、アフガニスタン系のイスラム教徒で、
事件当初はISへの忠誠が報じられたが、つながりは不明とされる。
(イスラムに背くとされる)同性愛を、嫌悪していたとも伝えられるが、
その他の情報もいくつか出てきて、いろんな憶測が流れているようだ。

もし、アメリカ人でイスラム教徒でもある彼自身が、同性愛者でもあり、
家族と宗教、ホモフォビアとイスラモフォビアの間で、
何重もの抑圧と葛藤を内面に抱え、自己否定の末に行き場を失い、
最後に辿りついた過激思想に刺激され犯罪に走り、殺害されたのなら、
この事件は、世界にとってどれほど痛ましく、癒しがたい裂傷だろうか。

事件を受けて、アメリカでは銃規制に関する議論が高まっているが、
銃の惨劇に、「つくづく日本に生まれたよかった」と感じるのは、
たしかに素直な気持かもしれない。だが、現実にはどうなのか。

ある男が犯罪と社会ついて、得意そうに喋っていた。
(銃の)引き金を引いても、タマが入っていなければ、人は死なない。
大切なのは、銃を奪うことではなく、タマを抜くことだと。
彼はいったい、何が言いたかったのか? 

実際に人を殺しさえしなければ、相手が死んだりさえしなければ、
殺意を抱くことや、殺しの真似ごとくらいは、なんの問題もない。
もし誰か死んだとしても、悪いのは、銃を発砲した犯人だけではなく、
弾の入った銃でもあるのだから、そんな危険物が放置されているのを
知っていたのに対応もせず、身を守るのを怠った側にも落ち度がある。

つまり最大の社会的寛容に伴う、自己責任の貫徹を説いているのだ。
このネオリベラルで、野蛮なシステムから、逃れられる人間はいない。

銃規制は、実際の犯罪抑止には、もっとも有効な手段のひとつだろう。
だが、本当の問題は銃ではない。殺意と憎悪、差別と孤絶なのだ。
日本に関していえば、銃のない社会でよかったあと安堵するのは、
イスラム教徒がいなくて、LGBTもいなくてよかったと思うのと、
たとえ無意識であろうと通底する、排除の感覚である。

その通りで、この事件に関して、イスラム教徒もLGBTも、
日常から最も遠い存在で済んでいる日本人の言説は、
かなり歯切れが悪く、トンチンカンなものが多かった。

たとえばリベラルな人たちが、銃撃事件の直接の被害者である、
LGBTの人々よりも、イスラム教徒に向けられる差別や偏見に、
ことさらに気を遣うってしまう、特有の心理とはなにか?
人権尊重、差別反対の「普遍的価値観」ゆえにか、
イスラモフォビアの裏返しか、過激思想への共鳴か、
それとも、欧米への歪んだルサンチマンのせいだろうか?

あるいは昨年、パリのテロの時には、
イラクやシリアでの連日の空爆、他の地域のテロの死者などは、
少しも報道もされていないと不満を鳴らし、欧米ばかり重要視する
この「非対称性」はなんだと、激高していた人々はどこへいったのか。

オーランド事件では、初期の関心の中心だったISのテロやイスラムが、
どうやらキーワードでも、直接の原因でもないらしいと見られた途端、
潮が引くように背を向けて、それ以上の言及をやめて沈黙スルーし、
何事もなかったかのように、すんなりと日常に戻っていったが、
それこそ非対称どころではない、公然たる「差別」というものだろう。

だがそれが、一方ではいま、
憲法を守れと最前線で声を挙げる人々にも重なるという事実。
それを、どう考えればいいのだろうか?

ネットで知り合った、何人かのLGBTの知人たちが、
蚊の鳴くような低い声で、死者への追慕をつぶやいていた。
人知れず、殺害の衝撃と無関心の重圧に耐えていた。
だがこの人たちは、その多くがいまだ見えない存在なのだ。

オーランドの銃の悲劇は、一般メディアが撒き散らした
「やっぱイスラムこわ~」「殺されたのホモだって」という、
曖昧で雑駁な偏見を、日本人の脳にさらに刷りこんだだけで
すでに誰からも、忘れさられてしまった様子だ。
(それどころではない。参院選のほうが大事なのだ)

だが本当に、LGBTの人々も、イスラム教徒も、
わたしたちの身近にはいないのか。
ほんとうは、見たくないだけではないのか。

差別を受ける者は、無力な被害者である限り、充分に同情される。
だがいったん、みずからの権利と尊厳のために声を挙げると、
それまでの味方から、手の平を返したように、叩きのめされる。

それでも想像してみてほしい。
もし子どもたちが将来、イスラム教徒を生涯の伴侶に選んだり、、
LGBTのいずれかであることを、家族に告げたとしたら・・・

その時わたしたちは、かれらを頭から否定し、追い出すのか、
説教したり、泣いたり脅したり、絶縁すると喚いて、やめさせるのか、
それとも見て見ぬふりをしながら、しぶしぶ共に生きるのか・・・
いずれ、ひとりひとりが問われる日がくるだろう。

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別窓 | poems
Ascension to Eternity
2014-08-23 Sat 21:23




宇宙のエヴァ


フレシサム、赤ら顔のお隣りさんの、
時を忘れた草原のふところは、
みずうみのように、万夜の身体を、
すっぽりのみこむ母さんで、
カムイシンタの、幼な児たちは、
月の籠もれる雪の森、ほのかな炉辺、
火のおばあさん神の、膝に抱かれて、
ゆらゆらと、星の揺り籠に夢を結ぶ。

けれども、商人が砂漠を踏むように、
戦士が財宝を貪り、囚人が森を拓くように、
金色にさざめく、プラーナの海を突き破って、
天上を侵犯した冒険者は、ひとりもいない。
そんなことをしたがってみせるのは、
石から生まれたばかりの、猿たちだけだ。

人の知覚は、光に盲いて、
肉は戸惑い、激しく震える。
光よりも高きもの、
不可知の雲の放電。
蓮花の真ん中に、
仏陀の智恵が宿るように、
おだやかな闇の、辺土には、
霊の孤独をいたわる、此岸の実。

いまも、憶えているか? 
どうにか、思い出せるか?
あの高い空は、とおいむかし、
わたしたちが捕えられ、
炎を立てる薪の上で、
最期に見つめた碧空。

神の沈黙。
宇宙の静謐。
慕わしい天の篝火、無音の虚空に、
思念ははや、言葉を有さず、
愛もまた、肢体を用いることなく、
瞳も眼差しも、腕も指先も、姿形も、
衣服も、食物も、住居も、財布も、
どれもみな、そこに投げ出し、
ぜんぶ置き去りにしておいで。

光と陰が反転し、
響きあい、全一に溶け合う、
霧よりも細やかな、
姿なき、在るものよ。

ただひとり、彼女だけが、神に招かれる。

残された地の子らの祈りが、
聖なる炎の、上昇を見まもる。

かもめよ、
星の鏃、涙の散光、真珠、
満ちてくる潮よ。
太陽と月にも劣らぬ、
ロシアの娘。

宇宙のエヴァ。
もし、あなたがなければ、
わたしのいまも、ここになかった。
燃える渇きも、癒されなかった。



ワレンチナ・テレシコワ(Валенти́на Терешко́ва 1937年~)  
  世界初の女性宇宙飛行士。旧ソ連。1963年6月、ボストーク6号に搭乗。
  71時間で地球を49周しながら、ボストーク5号とランデブー飛行。

  いま残された世界において、テレシコワほど神話的な存在はないだろう。
  宇宙空間での単独飛行に成功した、数少ない一人でもある。(女性では唯一)
  あらゆる意味と側面で、彼女の達成は、全世界の女性たちの、魂を覚醒させた。
  旧ソ連の目指した輝かしい理想と、人類の希望を体現した彼女は、
  いまもロシアの至宝であり、世界中から敬意を集める。
  



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星の間隙
2014-05-12 Mon 16:43

月のさやかな夜にも、星の瞬く夜にも、外に出て探してみよう。
毎晩、いまほど豪華な黄道帯を見逃すのは、人生の損失。

4つの惑星を過ぎ越して、蠍の火が水面を照らす、天の川の岸辺から、
星がいちばんたくさん重なって、暗くなって見える、光の底に降りてゆこう。

昨夜もまた、月と火星が、隣り合っていたね。
太古から、人の想像力をかき立ててきた、赤い惑星。
流砂の河床を、はじめて歩く地球人は、だれなのだろうか?
かれらは戻らず、そこに住んで、いつか運河を築くのだろうか?


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Valles Marineris: The Grand Canyon of Mars
Image Credit: Viking Project, USGS, NASA


星の間隙

さまざまなものごとの、埒の外にある
隠されたコードに導かれつつも・・・
目盛りよりも、間合いこそ大切な、
だれしも経験のある、
単純素朴な実感として・・・

星を見つめる瞳は、
宇宙の深さを宿すのだ。

・・・水平線に浮かぶ、月の姿に、
海に去った、恋人の嘆きを奏でる、
サッフォーの竪琴の、
切ない調べのように・・・

おごそかに、深く、 
身体には、宇宙が刻まれ、
なごやかに、優しく、
宇宙には、身体が描かれる。

予感しながらも、躊躇した、
光と闇の交感に、耐えなさい。
人ははじめ、完璧な球体だった。
その詩が、奇跡であるように・・・
愛が、ふたたび可能にする結合。

宇宙とは、畏怖すべきものだ。
万物もまた・・・・・そうだ。
ひとたび生まれ、世界に存在した生命は、
二度と滅びることはない。

夜明けとともに咲いて、
昼までには萎む花のように、
人との出会いと別れも、
これが最初で、最後ともなろう。

永遠とは、始まりも終わりもない、
輪廻のことではなく、
不死とは、 病んだ臓腑を新たにする、
若返りのことではなく、
記憶とは、 脳髄を駆けめぐる、
微弱な電気信号ではなく、
人も、その歴史も、
決して、「ちっぽけなもの」ではない。

けれども、星辰の間にあっては、
謙遜であらねば意味がない。

想像力とは、 時空間を観自在に
天翔ける羽衣なのか?
それとも、 鉄の靴が擦り切れるまで、
重荷を運ぶ牛歩なのか?

天の星は、過去の光。
時間が、晴れた空間になる。
けれども人々の隔たりは、
さらに遠く、さらに歪んで、淀んでいる。

・・・光を・・・跳躍できるのか?
「鉄の靴」こそが、推力になる。

軽々しく「愛」を弄して、
愛の全能に、惚けるのではなく、
天地の隔たりと、
まことの愛の不在と、
人の欲の残酷さに、
徹底的に傷いて、
打ち砕かれた骨となるためにも。

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At the Edge of NGC 2174  
Image Credit: NASA, ESA, Hubble Heritage Team (STScI/AURA)



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星の聖痕
2013-12-09 Mon 00:54

12月6日の夜、参議院本会議において、『特定秘密保護法』が可決・成立。
不戦を誓った、日本国の心臓に、またひとつ毒矢が放たれた。

その瞬間を、インターネット中継で視聴した。
頭が真っ白になり、賛成・反対の票数さえ、聞き取れなかった。

人間にとって、もっとも大切なものは、自由だ。

とりあえず、さまざまな印象を、詩の言葉に託そう。
「この星に生きる、いのちのひとつとして」(山本太郎)。
まとまった感想は、できればまた後日に、あらためて。
今夜はすこし、静かな物思いに、ふけりたいのです。


おばか映画の、感動?シーンに流れるテーマの、静謐なピアノ・アレンジ。
Armageddonより、A Wing and A Prayer、他をどうぞ。






星の聖痕


夏は沈み、秋も過ぎ去り、月も、金星も姿を消した、
その夜の底は、暗く、冷たく、よそよそしかったか? 
真夜中は、隕石のように熱く、轟いて、闇を焦がした。
上気する大洋の幻ではなく、取り戻すべき明日が、肉眼で見えた。
あてなき夢や、うつろな瞳は、もうどこにもなかった。

どれほど打ち拉がれても、かならず立ち戻る。
地の息が霜となった朝、旅の彗星を滅してしまった、
あの太陽よりも、ずっと昔に、わたしの命を創られた、神のもとに。
千も万も吹き荒ぶ、世の嵐に抗しながら、あなたの園へ。
夕の風が吹くころ、だれにも隠れずに、もういちど自由に、
知識の果実ではなく、蒼穹の星に、両の腕(かいな)を伸ばすために。

自由の喜びに、胸を張って、歩いてゆこう。
やがて、弓矢も凍る季節がおとずれようとも、
逃げ出して、道に迷い、凍える友らを叱らず、励ましながら、
ひとりからひとりへ、手に手を握り、傷と傷とを重ね合わせて。
雪の衣を血に染めた、気高い姉妹たちを、悼みながら、
その日を恐れず、歴史の荒野に、光の種を、播き続けよう。
葬られた過去は、足音のように消え果てぬ、未来に埋められた地雷。
子どもたちの四肢が、千切れ飛ぶ前に、わが身を与えよう。

それから、どこまでも高く、限りなく上昇してゆこう。
この小さなふるさとだけが、いのちの棲家ではないのだから。
人はもう、鈍色の雨の野で、無心に花を摘む、悲しみの器ではなく、
火の衣を落とした、冬木立のように、威厳ある、七つの光を纏うだろう。
自由な魂は、風見の鶏に、道案内を頼まず、ただひとり立って、
神とともに歩み、いく世も明けぬ闇夜の、絶望と苦悩と不幸を、
すすんで肩に負い、海の極みを踏んで、重力に耐えぬくだろう。

あの月の面(おもて)に、どれほどの岩が、降りそそいだことか。
乳白の頬を、無慈悲に裂いた光条は、霊魂の消えない焼印。
人となり、人のあいだで生きた、神の受けた傷、流した血。
いくたびも混乱し、破壊され、人の罪業に、滅びかけた世界は、
聖痕に焼かれた女たち、男たちの、絶えざる祈り、屈せぬ闘いに、
ようやく赦され、救われ、贖われて、朝のように生まれ変わる。
人知れず、犠牲は成し遂げられ、世界は更新される。

奇跡の星に生まれて来る、まだ見ぬ、子どもたちよ。
天の十字架が、風の大地に突き刺さる、美しい冬の夜よ。


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Image of Milky Way behind Earth. Author unknown.




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仲秋夜半
2013-09-20 Fri 00:58

   
名月は、東の空に、愛でるもの。

宴の尽きた、真夜中の丘には、
白い衣、女たちの輪舞。

太陽は昼を、戦士たちと過ごし、
月は夜を、死者たちと過ごします。

夜半の真白な庭。

星の消えた虚空。

子どもが、親の目を盗んで、
裏木戸を、ギィーと開けるように、
魂は漕ぎ出す、垂直の空。


        仲秋の名月2


霊魂は、天の光を、肉に宿すと、
ひとつとすべての前に、
傷ついて、墜落する。

欲望は、海の星にも、網を仕掛けて、
銀のウロコを、捕まえようとする。

世界のはじまりから、
一睡もしない、神の姿に、
悔い改めぬまま、わがままに祈る。

力や慰めや、平和や幸いを
早くよこせと、要求しながら、

安らいで、人は寝入る。

くりかえし、地は震える。

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睡蓮
2013-09-17 Tue 23:32

秋晴れの、果てなく、高い空よりも、
紗のような、雨音の優しい、露色の9月。

炎暑の季節を、越えられなかった、いのち。

干からびた、工場の若者。
胃まで焼けた、節電のお年寄り。        
殻を、脱げなかった蝉。
羽根を、なくした蝶の、お弔いに、

天日が、顔を覆って、涙をそそいでくれるのに、
人は追われ、急かされ、仕事に戻される。

睡蓮1


夏山は、豪奢な、緑の絨毯ではなく、
海辺にも、ぶどう酒の波は、打ち寄せず、

青空を浮かべた、池に遊ぶ、
睡蓮の、無心もまた、
ただ慈愛、ただ微笑では、ありません。

今年もまた、知らずに、踏み越えてきたのか。
いつか、世界とお別れする、カレンダーの日付を・・・


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星の記憶 記憶の星
2013-09-16 Mon 01:49

青い星


この荘厳な、星の姿を、見るたびに、
ここにいま、自分が生きている、実感よりも、
ながい旅を終え、ようやく、戻って来られたような、
懐かしさと安らぎに、涙があふれるのは、なぜだろう・・・・・

星に、もっとも近いものは、花が宿した命。
足元で踏みにじってしまった、青い花たちが、
あなたに残した、ゆるしの香りを、忘れないでください。
目には見えない、調べのような、いく世代もの悲しみです。

墓守りをする女人が、手向けた花に秘めた、愛のなかで、
静かに広がり、解き放たれてゆく、記憶の波が、
生ける星、死せる星、万有を生まれ変わらせる、
輝ける、母の身体となるのです。


月下美人2


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枯れた無花果の木
2012-10-04 Thu 11:30

枯れた無花果の木

(花の嘆き)
世界があっさりと、壊されてしまったのは、
みんなが気前よく、ゆるしてあげたからです。
土下座をする人たちは、あとでもっと悪いことをするのに、
やっぱり許してもらえるから、いつも元気いっぱいです。
でもだれが、「ゆるしなさい」って命じたのですか?
花を踏みにじって、あとに残った香りを、楽しむのですか?

(鳥の涙)
世界にいつまでも、不幸が尽きないのは、
みんなのつくる、明るい笑顔が、絶えないからです。
怒ることも、悲しむことも、疲れることも許されず、
涙をふいて、文句も言わず、上を向いて行進するほかないからです。
でもだれが、「笑いましょう」って強いるのですか?
空で見てきた、鳥たちの飛語が、どうしてデマなのですか?

(風の呻き)
世界がこんなにも、色あせてしまったのは、
みんなが、「愛してるよ」って、言い始めたからです。
臆病な斥候の、いい加減な冒険話を信じこんで、
やれば出来るんだと、昼も夜も、夢をあきらめないからです。
祈っても、努力しても、失敗のデータが増えるだけ。
命を守ろうとする声を、風評被害だと騒ぐのは、だれですか?

(月のため息)
世界がどうしても、平和にならないのは、
みんながすぐに、奴隷の幸福を求めるからです。
戦争も、放射能もなんのその、自分さえ幸せになれば、 
網膜には、世界のすべてが、きらきら輝いて見えるからです。
いいところだけを見ろって、だれが言うのですか?
月の裏側の、あばたの顔を、見たことがありますか?

(光の天使)
神さまが世界を、救ってくださらないのは、
みんなが神さまを、召し使いにしているからです。
神さまが人に仕えて、願いを叶えるのではなく、
人が神さまに従って生きるのが、まことの「道」なのに、
そんな神さまは嫌だって、ぽんと棄ててしまったからです。

季節ではないからと、実をつけてなかった無花果(イチジク)の木が、
神さまに嘆かれて、枯れてしまったように、
自由を怖れて、世のしくみに従う、空気に抗えない心も、  
不意を襲われて逃げ込んだ、財布のなかで息絶えるでしょう

大自然の驚異は、成功の法則よりも、偉大です。
季節はずれの無花果とは、良い知らせを聞いて、
はっと神さまのほうに振り向く、自由な魂、生命の躍動。
自由こそが、枯れ木に咲いた花にもまさる、命の奇跡なのです。

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九月の空
2012-09-25 Tue 02:44

九月の空

東の果ての片隅の、小さな弧状の島々には
エジプトも、バビロンも知らぬ民の群れ。 
奪われし山河にもめぐり来る、春の光に涙する心もなく、
不思議な呼び名だけが、むなしく、丸々肥えてゆく。

海原よ、波濤よ、きらめく水面に、
よけいな文字を、だれが描いたのか?
大人たちは喜々として、命のゲームをカウントする。
若者たちは黙々と 草生す屍、水漬く屍になり果てよう。
子供たち、あれが明日の きみたちの姿だ。
豆腐のような島の民、忘れ去ってはいまいか?
あなたはそもそも、どこからきたのだろうか?

窓は、風の瞳。風は、地球の息。
レースのカーテンが、さらさら流れると、
九月の空が、飛び込んでくる。
眼の奥が、海のようにひんやりして、
街の屋根や、遠くの丘は、波打つ水平線になる。
九月の頬はいつも、東を向いている。
はるか東のほうにも、海が広がっている。

南の風と雲の子らは、びょうびょうと絶海をわたり、
タプカルを踊る 長老のような足取りで、
阿呆鳥を脇に抱え、おごそかに、霜の国へと向かう。
青い林檎をかじっていた娘は、ある日、
嵐の気配に窓をひらき、そわそわと身を躍らせ、
熟れたぶどう畑を、とうと駆け抜けて、
スネグラチカのように、ついて行ってしまった。

らいちょうの山にも、まりもの湖にも
烈しく、むごい季節がめぐる 火山島の民は、
だれも、娘の瞳を好まなかったから、
仙女になるほかなかったのだ。それから、
九月の夜は、冬を貼り付けるようになった。
ぶどうの実は、星の傷みを宿すようになった。
清らかな雨が、畑を潤すことは、もうなくなってしまった。

切り裂かれた大洋に、夜が明ける。
絶叫のような朝焼けに、一日がはじまる。
海があの鈍色の原子を、洗いもせず、清めもせず、
いやし難い過去もまた、こっそり流してはくれぬように、   
いまだ起こらぬ未来を、おののいて見つめる瞳は、
たとえ抉り抜かれても、預言を語りやむまいよ。

夕星が、羊を返し、山羊を返し、
子供たちを、母のもとに戻すように、
ひとつの名に群れる島の民らを、もういちど分かち、
それぞれの乳房なる、天地に呼びもどす声がきこえる。
枷を砕き、かんぬきを壊して、いま窓から飛び出そう。
風を追いかけ、海を越えて、万年の記憶を辿ってみようよ。


☆★☆★☆★☆★☆★


ほぼ、ひと月ぶりの投稿になりました。
白露を過ぎて、陽射しも柔らかくなりましたが、心を裂く出来事が多く、
秋の草にも、「感時花濺涙」の痛みを覚えます。

タプカルとはアイヌの古式舞踊で、神々や先祖への感謝を表し、
儀式の終わりに、経験を積んだ長老によって舞われます。
スネグラチカとは「雪娘」のことで、ロシアのクリスマスに登場する
サンタクロース「ジェドマロース」が連れている孫娘。
草生す屍(くさむすかばね)、水漬く屍(みづくかばね)は、
戦中に愛唱され、第二国歌とよばれた「海ゆかば」の一節からです。

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